時給900円で働く30代

限りなく事実寄りのオートフィクションで、登場人物の名前は全て仮名です。

第二十二回 信用の履歴

このブログは主に昼休みに書かれています。
朝は忙しなく、十五分の休憩中は落ち着いて書けず、仕事終わりも買い物をし、夕餉を作り、喰らい、湯を浴びればすぐに就寝の時です。以前は夕餉の時間にも書くことはあったのですが、最近はその時間、アメリカのドラマなどを観賞しているので益々昼の時間にしか書く暇を取れない状況なのです。
そうなると、何か調べ物などがあると、それも昼の時間を侵食していき、書く時間は減る一方です。
ここ最近は色々と調べ物があり、その一つがクレジットカードについてでした。
私は今現在二枚のクレジットカードを所持しており、一枚は年会費が掛かるもので、もう一枚は掛からないものなのですが、日常買い物やオンラインショッピング、月の引き落とし等で使うのは年会費無料のカードで、年会費の掛かる方は殆ど使わず、限度額も年会費の掛かる方が低いという歪な状態が彼此十年以上続いており、今回漸く手を付けることとしたのです。
そもそも年会費無料のカードをメインに使っているのも、単に口座がメインの銀行だからというだけだったので、より条件のいいカードを見付けそれをメインに挿げ替えるべく、これを機に色々と調べ、申し込み、カード会社が私の信用の履歴を調査し、無事通過し、一枚のカードが届けられたのです。

私は基本的に金に縁遠く、半無職の頃は二十代も後半だというのに全財産が一万円もないということが珍しくない程の体たらくなのですが、借金というものは好きではなく、実際クレジットカード引き落としのタイムラグも心落ち着かないのです。
しかし、私の父は、私が東京に来て程なく点鬼簿入りしたのですが、その父は私とは逆に金は稼ぐのですが借財も多く、大きな企業に勤め、一千万を超える年収を稼いでいた時期もあり、働いている頃は人並みに暮らせていたのですが、死後調べてみたところ、定年で退職したときに、それこそ数千万円也の退職金を受け取っていたのに、あっという間に右から左で消え去り、同じ会社に再雇用されて数年働き、そして完全にリタイアした後には貯蓄は一切なく、ふた月に一度の年金だけで過ごす日々であり、年金の支給前には煙草代さえなくなり私に無心する始末なのでした。
私が借金を厭うのは、ひと月先でさえ不透明であるからという理由が多分にあるのでしょう。
また、クレジットカードは自動引き落としなのでまだいいのですが、借りたお金を返すときに、何も受け取ることなくお金をただ渡すという行為が途轍もなく口惜しいのです。

先日、ミンとフェイフォンが、彼らの知り合いの越南人と、彼女のビザのためだけに、書面上で結婚すれば金二百万円也を受け取れるのだけれど如何かと訊かれ、私は非常なる嫌悪を感じつつそれを断りました。
私は元来結婚願望はまるでないし、結婚というものに何の重きも置かない人間ですが、何やらとても厭らしいものを感じ、その日は一日気分が晴れませんでした。
また、私は全くレイシストでもなく、それどころかここ十年ほど、私の恋人は欧羅巴人であったり米国人であったりしていたので、このようなことを言うのはおかしなことかもしれませんが、私は、日本にあまり安易に外国人居住者が増えて欲しくないのです。
勿論愛し合った上での結婚などに関しては構わないのですが、中々にデリケートな問題であり、誤解のないよう伝えるのは至難ですが、何とか汲み取って頂きたいと願うのみです。

二百万円とは、濡れ手に粟で手に入るのならば嬉しい額ですが、自分の何かを曲げてまで手に入れたい額でもありません。
ですが、私はたとえ百億積まれても信念は曲げないと言うほどに強い意思は持っておりません。
実際幾ら提示されていたら首肯していたのか、ミンとフェイフォンに尋ねられた後、暫しそれを考えていたのですが、億という単位までは届いたものの、数学的帰納法による禿のパラドックス的な問題にぶち当たり、これを放棄しました。

私は借金が嫌いですが、今はかつての放蕩の代償を、完済の目処さえないまま返し続ける日々なのです。